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最近の胃・十二指腸疾患の形態学診断法の進歩は著しいが,その病態生理の解明にはほど遠いのが現状であろう.胃機能(分泌,運動など)を知ることは疾患の治療上からも重要なことではあるが,検査法の設定やその結果の判定が必ずしも容易でないこともあり,その面の研究が遅れていたことは否めない事実である.ガストリンの発見以来,胃疾患の病態生理に関する優れた研究も数多く,消化管内に存在する種々のPolypeptideのRadioimmunoassy法を利用しての測定や作用機序の解明,最近ではヒスタミンのH2-Receptorの抑制物質の発見,更にはH+の粘膜内への逆拡散に関与する可能性の強い粘液中の物質の測定等々トピックスには事欠かない.しかしわれわれが日常診療において簡単に利用できるのは,わずかに胃液検査法のみである.胃液中の酸,ペプシン活性は古くより測定の対象にされていたが,検査法の変遷が急速なためもあり,本邦では検査方法がまちまちであった.最近ようやく消化器病学会胃液測定法検討委員会により測定法が統一された.紙面の都合もあり胃液ペプシン活性については省略し胃液酸分泌検査法についてのみ述べてみたい.
Kayにより1953年に発表された増大ヒスタミン法は燐酸ヒスタミン0.04mg/kgの刺激で胃内の全壁細胞が動員されその値はその人の最大の酸分泌能を現わすとし,ここに初めて定量的胃液酸分泌検査法が完成した.その後刺激剤は,ヒスタミンからヒスタローグへ,更に最も生理的かつ副作用の少ないガストリンへと変ってきた.臨床的にはガストリンのC-terminal tetrapeptideが真のガストリンとほぼ同一の胃分泌生理学的活性を有しかつ合成も簡単なことよリテトラガストリンが使用されている.
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