胃と腸ノート
胃潰瘍癌のレントゲン像(3)
安井 昭
1
1順天堂大学消化器外科
pp.574
発行日 1974年5月25日
Published Date 1974/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111836
- 有料閲覧
- 文献概要
図1はⅡc+Ⅲ型早期癌(症例1)の立位充盈軽度第1斜位像である.胃角小彎の矢印の部に濃淡2種の扁平なNischeが目立つatonischな胃である.胃角上部からNischeにかけての小彎線は硬く,伸展性にとぼしい.またNischeから幽門側にかけての辺縁も硬く,いくらか陥凹しているように見受けられる.小彎を中心とする病変による変化が大彎にまでおよんでいるとは思われない.Nischeそのものの良悪性の判断はつけにくいが,Nische上下の小彎線の硬さや,濃淡2種の扁平なNischeなどの組み合せから判断して,やはり悪性を疑い,胃角小彎を中心に精査する必要がある.
図2は胃角部前壁のレントゲン像である.2つの小さい方の矢印はいずれも癌性Nischeである,上の方のNischeは胃角部のもので輪廓の不規則な深い潰瘍のまわりに陰影の淡い浅い潰瘍がとりまき,胃体部方向から2~3本の皺襞がのびていて,その尖端は棍棒状の丸味をおびている.下の方のNischeは硬い感じで丸味がなく,癌性Nischeそのものの像を示している.上下2個の大きな矢印の間が癌病変の口側および幽門側の境界を示すもので,切除胃の小彎線の縦に長い陥凹性病変と一致する所見である.図3は立位軽度第1斜位の圧迫像である,小彎を中心に後壁側に大小さまざまな浅い斑状陰影が多数みられる.小彎線上の2個の太い矢印がⅢの部をあらわし,Ⅱcがそのまわりをとりかこんでいる.その下方の小さな矢印でかこんだ不規則な多数の陰影斑は小さな粘膜びらんを表わしている.このように微細な質的診断には圧迫像1)~4)が有利である.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.