胃と腸ノート
胃潰瘍癌のレントゲン像(7)
安井 昭
1
1順天堂大学消化器外科
pp.1136
発行日 1974年9月25日
Published Date 1974/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111857
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図1は症例3(Ⅱc)の背臥位二重造影像である.できるだけ浅い陥凹全体の様相をつかもうとして軽度第1斜位をとらせた.比較的小さな凹凸を含む浅いⅡcに向って棍棒状の皺襞が後壁側から4~5本,前壁側から2~3本,小彎側(口側)から2~3本程度あつまっている.この棍棒状皺襞はいずれも陥凹部までのびているが,その尖端は融合断裂,または断裂している.この状態を質的に描写したのが図2の二重造影像である.背臥位第1斜位より徐々に背臥位正面にもどし,粘膜表面の凹凸や潰瘍縁の状態を浮彫りにしたものである.胃角付近の浅く小さな様々な陥凹の周囲は小さな多数の顆粒状の粘膜によってとりかこまれている.一応潰瘍瘢痕の部分であることが読みとれる.またこの部に向って根棒状になった皺襞がのびているが,この瘢痕部分と思われる外側縁で急に断裂している,このような所見は良性潰瘍では得られない像である.したがって癌であることは疑うべくもないが,早期のものか,もっと進んだものなのかの鑑別診断をしなければならない.しかし最近のように癌病巣が小さくかつ深達度の浅い早期癌(m)の診断になれてくると,ともするとこのような例は深達度pm程度の中期癌と誤診することがある.したがってその深達の程度を決めるには部位にもよるが,圧迫法が案外役立つことがある.この例は胃角部小彎の比較的ひろい範囲の瘢痕の中に存在する小豆大~米粒大の小さく浅い陥凹を有する瘢痕癌であるので,圧迫の程度にもよると思うが,この部は比較的容易に,しかも病変を忠実にあらわすことができる.このような病変(特に小さい病変の場合)の質的診断はさきにものべたように充分に圧迫法を駆使するのが有利である.
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