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いたみに対する関心は,最も古く,また最も新しいともいえる.とくに近年ペインクリニックの発展にともない,麻酔科医のいたみに対する関心は著しく高まってきた.これまでにも神経ブロックについての書物はあったが,これらはいずれも手技を主としたもので,広い立場からいたみについての基礎と臨床をおりまぜた成書は見当たらなかった.この度清原博士の著書「いたみの臨床」を手にして,まさに待望されていたものが,生まれたといった感を深くした.本書の内容を簡単に紹介すると,第Ⅰ章ではいたみについての基礎的な事項,たとえば,末梢性および中枢性のいたみの機序について,これまでの広汎な文献をもとに解説してあり,とくに最近のGate Control Theoryや血漿Kinin等の発痛物質を中心としたChemalgiaについての記述は,麻酔科医はもとより,いたみに関心をもつ基礎医学者にとっても,興味深いところであろう.第Ⅱ章ではいたみの特質,とくに表在痛や深部痛,内臓痛や関連痛等についてくわしく説明されていて,各方面の臨床家にとって参考となることが少なくない.第Ⅲ章ではいたみの測定や鎮痛剤の効果判定について,これまでのいろいろな研究が紹介され,とくに鎮痛剤の効果判定には十分慎重でなければならないことが述べられている.第Ⅳ章ではいたみの対策として主として神経ブロックが述べられているが,さらにいたみを部位別に分けて,たとえば頭痛,顔面痛,腹痛,背痛,腰痛等について,それぞれの特徴と治療法がくわしく記載されているので,麻酔科以外にも役立つところが多い.
本書の題名は「いたみの臨床」となってはいるが,著者の経歴と内容からみて,むしろ「いたみの基礎と臨床」の名がふさわしいようにさえ思われた.従来ややもすると経験的に,また対症的にとりあつかわれてきたいたみの対策に,基礎的なよりどころを与えてくれる意味からも,本書のもつ意義は大きい.文献も数多く引用されているので,この方面に興味をもつものにとっては,役立つところが大きいであろう.通読後の印象としてあえて一言述べるならば,基礎的な事項の解説をいま少しく平易に述べてほしかった.そうすれば一層理解を助け,親しみやすいものとなったであろう.
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