Japanese
English
特集 いたみ
いたみの測定
On the Measurements of Pain
清原 迪夫
1
Michio Kiyohara
1
1東京大学医学部麻酔学教室
1Department of Anesthesiology, Faculty of Medicine, Tokyo University
pp.10-23
発行日 1967年3月25日
Published Date 1967/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904387
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I.感覚の測定
感覚は,本来主観的な内容をもつているから,これを数量的に測定することは不可能である。しかし,その数量的研究は,刺激の測定と,内省による感覚の意識内容の明示されることにはじまる。一般に,感覚の閾値は,数量的に測定することは可能で,古くWeber,そしてFechnerが示したところである。すなわち,刺激の強さをI,これに対する識別閾を±△Iとするとき,△I/I=constant(Weber, E.H.1831)て,この△I/Iは,生体の分差感度の尺度ともみられる。
これからS=klogI/I0が導かれた。このときSは感覚の強さ,kは定数,Iは刺激の大きさ,I0は閾刺激である。これは,感覚の強さは,刺激の大きさの対数に比例した量として表わされ,感覚の強さを等差級数的に増すためには,刺激の大きさを等比級数的に増さなければならないことを意味している。ヒトの感覚においては,この法則は,中等度の刺激範囲内であてはまることが知られているが,いたみの感覚については,すぐ適用するわけにはゆかない。その理由として,いたみ刺激によるいたみ受容器の興奮や,いたみ神経インプルスの活動様式,中枢連絡と感覚の成立についても十分明らかでなく,また触→圧→痛,温→熱→痛,冷→寒→痛というような刺激の強さによつて,感覚のmodalityが変つてくることなどがあげられる。
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