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書評「大腸疾患の鑑別診断」
多賀須 幸男
1
1関東逓信病院
pp.935
発行日 1983年9月25日
Published Date 1983/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109341
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1969年に竹本教授と共に全結腸の内視鏡検査を世界にさきがけて成功し,そののち一貫して腸病変の診療に精進している長廻博士の文字どおりの労作である.少し前に出版された同名の英語版は,海外で大好評を得ていると聞いている.日本の医学書には珍らしい瀟洒な表紙を持つ320頁の本を,数日かけて読ませていただいた.192頁の本文のあとに40症例の提示があり,そのあとに簡単な手技の解説が付けられている.内視鏡だけでなくX線および病理所見も詳しく,鑑別診断を通じて書かれた大腸疾患のモノグラフになっている.
“大腸疾患の種類は豊富であるが,全体をよく眺めてみると診断は割り切って考えることが可能であり,より現実的である(自序より)”との考えで書かれた著者の試みは見事に成功しているように思われる.大腸病変の理解を困難にするのは炎症性疾患(IBD)にあるが,著者はその疾患の特徴像のうちで潰瘍性大腸炎に合うところはどこで,異なるところは何かという視点に立って,その各々の病変を解説している.これは極めて現実的な,実際に役立つ方法と思われた.
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