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書評「―白壁フォーラム―大腸疾患の診断」
牛尾 恭輔
1
1国立がんセンター中央病院放射線診断部
pp.898
発行日 1996年6月25日
Published Date 1996/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104176
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本書は,白壁先生の弟子にあたる多くの先生方が,その献辞に“白壁彦夫先生への尽きせぬ感謝を込めて”とのみ書いたように,白壁先生の指導を求めてはせ参じた多くの先生の思慕が成し遂げたものである.しかしただそれだけではない.そこには感情を昇華し,白壁先生が真に求められた学問,特に比較診断学,比較形態学に基づいた理論の統一化を,多くの炎症性疾患,腫瘍性疾患を通して読者の眼と心に訴えている.その意味において,白壁診断学とも言うべき消化管の形態学の真髄を述べたものである.本書を読めばこの白壁フォーラムの歴史が,X線二重造影法による診断学の歴史であるとともに,戦後の荒廃から見事に立ち直り,医学の中で世界をリードするようになった,わが国の形態診断学の歴史でもあることがよく理解できよう.
西沢護先生,中村恭一先生をはじめとする編集委員会のメンバーは,北海道から九州にわたる多くの病院・施設から,それこそ貴重な症例を集め,炎症性疾患,腫瘍性疾患の診断理論を示している.その中には白壁理論に立脚した,またその理論を生み出した多くの代表的な症例がおさめられている。しかし,ただX線像や内視鏡が美麗で,切除標本や病理組織像と所見の1対1の対応がなされた典型的な症例を示しただけではない.この本は実際の臨床の場で,患者を前にして,シャーカステンやプロジェクターを前にして,どのように所見を読むか,どのように診断したらよいか,がわからないとき,また学問の方向性に迷いが生じたとき,燈台の灯が船を導くようにわれわれを導いてくれる本でもあり,発想の転換を導く名著である.
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