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昨年暮医学書院国際編集部から電話があり,医学書院ニューヨークからUCLAのProf. Dagradiの消化器内視鏡の本を出版したからと書評を依頼された.丁度Mrs. & Dr. Dagradiのメッセージ入りの美麗なクリスマスカードを受け取った直後で,シルバーブロンドの童顔に眼鏡をかけ陽気で気さくな,小柄な彼の姿が目蓋に浮かんだ.間もなくブルーの表紙に白字で「Gastrointestinal Endoscopy―Technique and Interpretation」と書かれたB5判262ページのずっしりと手応えのある本が送られてきた.
この消化器内視鏡,手技と読影と題する著書はDr. Dagradiが35年間にわたる内視鏡トレーニングの経験に基づき,内視鏡教育のアシスタントとして研修生に基礎的情報を供給する意図で書かれたものである.内容は内視鏡の歴史に続き総論として硬性鏡,ファイバースコープ,補助器具,電気手術器具,光源,内視鏡運搬車およびティーチングアタッチメントなど器械の解説,消化器助手,報告書およびその保管,写真撮影,殺菌消毒および器械の取り扱いと保守についても簡潔ではあるが要領よく説明している.更に消化器内視鏡の一般的適応と禁忌のほか内視鏡検査の合併症については,患者とエンドスコピストおよび助手の合併症に分け,患者のインタビューと指導,前処置,全身麻酔と術中内視鏡検査などと共に実地に則して懇切に述べていることが注目される.内視鏡手技編では上部消化管パンエンドスコピー,直腸・シグモイドスコピー,コロノスコピーおよびERCPにつき手技,適応と禁忌,患者の準備,挿入手技,エマージェンシーエンドスコピーおよび合併症について詳述している.読影編においては,上部消化管は総論,食道,胃,十二指腸および出血病変に分けて述べているが,各々の臓器について内視鏡解剖学をX線写真や図を用い詳細に解説し,初心者の理解に役立てていることは,著者の内視鏡トレーニングに基づく発想で,本書の特色と言えよう.また,彼の得意な食道内視鏡に関する記述は一段と光っている.各種胃疾患についても述べられているが,わが国内視鏡医にとって最も重要な胃癌に関してはBorrmann分類のほか日本の早期胃癌分類を紹介してはいるが,そのほか見るべき記述の見当たらないのは淋しい.胃癌が少なく依然として早期胃癌診断についての関心が低く,その努力のみられない米国臨床医学の実情を示しているものかもしれない.一方,出血病変に関しては別項を設け詳述されている.
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