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書評「胃疾患の臨床病理」
太田 邦夫
1
1東京都老人総合研究所
pp.901
発行日 1974年7月25日
Published Date 1974/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111952
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胃の病理学は,現在では日本の独壇場の観があるが,それは胃癌研究会をはじめとして外科学,内科学,放射線科学,病理学等の各領域の協同研究態勢が確立していることによる.これらのうち最も具体的な解析の場となる病理学の分野で,胃に重点をおいて10年の間,黙々として観察をつづけ,材料をあつめて来た畏友佐野量造博士が,その薀蓄を傾けたのが本書であるといえよう.恐らく10,000に達する材料から精選したものについて,殊に臨床家に直接役に立つ肉眼的解析に第一の重点をおき,その組織学的内容を丁寧に説明したものは,類書多しといえども正に本書に優るものはないと思われる.永年の経験者でも容易に手にし得ない貴重例も根気よく蒐集してあるのには頭が下る.
本書は先ず胃癌の病型分類にはじまり,つぎに早期胃癌の肉眼形態及び組織学的特徴を60頁にわたって解説したのち,各病型の組織発生,背景病変を克明に述べている.佐野博士が特に造詣の深い所謂慢性胃炎,隆起状病変の二つには,特に各々60頁,50頁が宛てられていて,本書のみでかなり深い知識が得られる.最後の約50頁は肉腫及び良性腫瘍の記載や例示にあてられている.
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