Coffee Break
早期胃癌1,000例から2,000例へ(6)―早期胃癌における多発癌の頻度
高木 國夫
1
1林外科病院
pp.523
発行日 1992年5月25日
Published Date 1992/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106866
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早期胃癌の中で,多発癌の頻度については,多くの報告があって,おおよそ10%前後とみなされているが,今回早期胃癌1,000例を越えた施設の報告で,多発癌の頻度を調査した(胃と腸 26:1346,Table2参照).早期胃癌の中の多発癌の頻度は,6~8%が3施設で,10%が2施設,11~15%が3施設であった.最も頻度の高い15%は最も低い6%の2倍以上を示している.この差異は切除標本の組織学的検索法の差異に基づいているであろう.早期胃癌の組織学的検索は,多くの施設では,早期胃癌病巣の全割であって,組織学的に偶然発見される微小癌は早期胃癌近傍に止まっている.切除標本全体の全割あるいは全割に近い検索をかなりの症例に行ってきた施設では,早期胃癌と離れた部位での微小癌がかなりの頻度に見出されることから,早期多発癌の頻度にこのような差異が認められたのであろう.
というのは,1991年9月の第33回日本消化器病学会大会で,多発胃癌の臨床的組織学的検討を行った鹿児島大学第2内科の報告をみると,切除標本の全割がなされた1,376例の多発癌の頻度は14.5%で,早期胃癌では,多発癌の頻度は17.8%であった.このように高い頻度は,切除標本の全割による完全かつ詳細な検討によって得られたものであって,今まで報告されていないであろうし,今後も現れないであろう.この報告に関連して,早期胃癌1,000例を越えた施設の早期多発癌の頻度の差異は,組織学的検索法の差異に基づいていることを物語っている.
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