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本書は1988年に上梓された第1版の改訂版である.30年近くも前,超音波医学が臨床の場で注目され始めたころ,「超音波医学一基礎から臨床へ」と題した成書があって広く知られていたが,本書はこれを更に今日的な姿に発展させることを意図して企画されたという歴史的な背景を持つ.本書は学会編集という点でも特異な成書である.今日,各学会においては,研究内容に関しての意見交換を円滑にするために用語の統一を図り,また,診療が適正に行われることを目的として各種の診断ないしは診療基準を作成することが試みられている.しかし,本書のような成書を学会として編集している例はあまり聞かない.それだけに,本書の上梓にはこのような共同作業を可能とした,学会の権威についての自負と教条的ではない開拓の精神をみる思いがあった.
ところで,通常,超音波診断学と言うときは臓器別の成書を考える.評者自身,超音波に関しては,循環器と腹部に関する成書にしか目を通したことはなかった.実は,このほど本書を拝見して,超音波診断が乳房,甲状腺,泌尿器,産婦人科領域にとどまらず,中枢神経,眼科,耳鼻科,歯科,呼吸器,整形外科,皮膚科という大変広い範囲の領域にも及ぶことを知った次第であった.ただし,臨床面での中心は心・血管と腹部臓器である.本書においてもこれらには多くのページを割いている.循環器領域についていえば,心筋コントラストエコー法,組織性状診断,デジタルエコー法,血管内エコー法,カテ先ドプラ法など,今日の話題にも漏れなく触れたうえで,その後に疾患別に超音波診断法を記述している.内容は豊富かつ最新である.ドプラ断層,Mモード血流のカラー映像とFFTを併せての記録は心内腔の血液の流れを美しく視覚化しながら現象の理解を容易にさせていた.超音波診断は画像診断の中心としてX線診断に並ぶとされるのであるが,動く画像を表示できることからは機能診断の要素が大きく,この意味ではX線診断に優ると言える.
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