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書評「消化器超音波診断学」
打田 日出夫
1
1奈良医科大学・放射線医学
pp.1310
発行日 1985年12月25日
Published Date 1985/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109658
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肝・胆・膵における小腫瘍の診断能が目覚ましく向上したのは超音波診断の発達によるものであり,超音波検査は消化器疾患の診断のみでなく,穿刺やドレナージによる治療にも不可欠な手段として定着した.聴診器と同程度かそれ以上の必需性と気軽さで日常診療において汎用されるようになった超音波診断も,習熟した技術と診断能力がなければ,十分に威力を発揮することができないばかりか,落とし穴にはまり誤診を招くことになる.序で著者は“簡便な操作で生体の内部構造を実時間で即座に観察し,診断することの利点に魅了されて積極的に臨床応用を行ってきた”と述べているが,まさに,手近にありながら,底知れぬ深さと妙味を持つのが超音波診断である.
消化器を中心とした腹部の超音波診断が目覚ましく進歩・普及し,本格的な消化器超音波診断学書の刊行が待ちに待たれていたときに,大藤正雄先生をリーダーとする本邦での第一人者のチームワークによる本書が発刊された意義は非常に大きい.消化器領域における超音波診断に関する著書は数多く出版されているが,入門書的で図譜的な要素が強く,消化器疾患の超音波診断を系統的に記述した著書は皆無に近かった.専門的な学術書でありながら,初心者にも理解しやすいように配慮されている本書は,きっと多くの読者に,消化器超音波診断の本質を教示し,一層興味を深めさすであろう.この領域における著者らの御高名と御活躍は,今更私らの述べるまでもなく,常に本邦における指導的立場におられ,超音波の特性を最大限に発揮した独創的な多くの研究成果は,本邦のみでなく国際的にも高く評価されているのは周知のことである.
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