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編集後記
大谷 吉秀
pp.1084
発行日 2005年6月25日
Published Date 2005/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104353
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「胃と腸」で化学療法が取り上げられたのは,1979年以来,実に26年ぶりである.もともと画像から得られる情報を題材にしている本誌では,化学療法の奏効率や効果判定に関する特集は取り上げにくかったことは確かであろう.近年,胃癌に対する化学療法の奏効率は向上し,日常診療でも十分存在価値が示されている.今回の特集では,化学療法の歴史や効果判定法,感受性試験,新規抗癌剤,世界の動向などがわかりやすく述べられている.主題研究では,術前化学放射線療法の著効例や,化学療法後の長期生存例などが示され,化学療法に対して大いなる期待を感じることができる.
高度進行胃癌に対するこのような治療法と,早期胃癌に対する内視鏡治療は決して相反するものではなく,それぞれ胃癌治療の両端を担うものである.両者の間を埋める手術療法の多様化と並行して,個々の患者さんの病状,全身状態,人生観に従って最も適した(個別化された)治療を行うための選択肢が増えたことは歓迎したい.これまで行われてきた内視鏡治療と外科治療の適応基準に関する議論に加えて,化学療法と外科的切除の選択についてもこれからは大いに議論されていくものと思われる.本特集が胃癌研究の指導的立場にあるわが国の採るべき今後の方向性を提示し,新しく門戸が開かれようとしている化学放射線療法の効果判定や作用機序の解明,ガイドライン作成に少しでも役割を果たせることを期待したい.
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