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編集後記
大谷 吉秀
pp.388
発行日 2004年3月25日
Published Date 2004/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104251
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MALTリンパ腫の概念がIsaacsonらによって確立してから20年,さらに胃MALTリンパ腫に対するHP除菌効果の報告から10年が経過した.ついに昨年,胃MALTリンパ腫は,胃・十二指腸潰瘍と同等のHP除菌治療が推奨される疾患として,日本ヘリコバクター学会のガイドラインに位置づけられた.まさに胃MALTリンパ腫は外科の手を離れ,胃温存治療の対象となった.本号では,MALTリンパ腫治療の経験が豊富な施設から除菌治療後の長期経過と予後に関する貴重な成績をまとめていただき,大変濃い内容になった.HP陽性群の奏効率は75%,NCでも内視鏡所見の改善があれば,長期の経過観察が可能との報告には勇気づけられる(江口論文).また,API2-MALT1遺伝子解析により,胃MALTリンパ腫は3種類に分類され,除菌治療が有効な群とそうでない群が色分けされたのは興味深い(中村論文,吉野論文).しかしながら,やっと市民権を得た胃MALTリンパ腫が,均一な疾患群でないことが判明してきた(吉野論文)のも事実である.現在どこまでが明らかにされ,問題点は何か,胃MALTリンパ腫の奥深さを感じとっていただければ,企画の担当者として幸いである.今後,除菌無効例に対する治療戦略が重要になるが,従来からの手術と放射線療法,化学療法の比較に注目したい.
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