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編集後記
大谷 吉秀
pp.1218
発行日 2001年8月25日
Published Date 2001/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103309
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「胃と腸」では1995年,第30巻第9号で「胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫-新しい視点を求めて」が特集され,良悪性の鑑別を中心に,当時としてはup to dateな議論が交された.その後,わずか数年の間に消化管間葉系腫瘍のひとつであるGISTの名称が世に広まり,多くの報告を目にするようになった.残念ながら,その概念,分類,良悪性の基準などの記述が統一されていないのが現状である.GISTをテーマに取り上げるにあたって,本誌編集委員会では,解析に必要な症例の集積が少ないことを危惧する意見も出されたが,これまでの流れを整理するためにも,「胃と腸」として,消化管間葉系腫瘍の中でのGISTの位置づけを示し,分子生物学的背景,臨床的対応などを論じることを目的に今回の特集が組まれた.GISTの歴史をわかりやすく解説した岩下論文をはじめ,遺伝子レベルの解析から,診断,治療に至るまで,最新の情報が網羅されたのではないかと考えているが,読者の皆様のご批判をいただければ幸いである.GISTは胃に多いが,小腸,大腸に少なく,食道にはない,生物学的には下部消化管ほど悪性度が高いなど,臓器特異性という点で興味深い成績が明らかにされた(岩下,高見論文).大重,大山論文に示されたGISTのリンパ節転移例の報告はたいへん貴重である.そのほとんどが,肝転移再発死亡していることは臨床的対応について多くの示唆を与えてくれている.c-kit遺伝子変異に関する研究は,腫瘍の悪性度判定のみならず,GISTに対する有効な治療薬の開発に一縷の光を投じており,今後の展開が期待される.
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