特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
c.病理・病変用語
adenoma-carcinoma sequence
武藤 徹一郎
1
1東京大学第1外科
pp.405
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104077
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腺腫の一部に癌が認められることはまれではない.この所見は腺腫内癌(carcinoma in adenoma)と呼ばれ,癌の一部に腺腫が混在している所見(carcinoma with adenoma)とともに腺腫が癌化する最も確実な証拠と考えられている(Fig. 1,2).すなわち,腺腫の一部に発生した癌は粘膜内で既存の腺管を破壊・置換しながら増殖し,粘膜下浸潤癌(sm癌)を経て,通常みられる潰瘍型癌に発育すると考えられている.retrospectiveな研究からもこの経過が支持されており,大腸癌発生に関するこの概念をadenoma-carcinoma sequence(ACS)と言う.最近の知見では広基性,扁平性は腺腫からの癌化が最も多いと推定されている.
初めは大きな腺腫に癌が発生するのがACSの典型であると考えられていたが,内視鏡的ポリペクトミーが登場するに至って,1cm前後の腺腫にも腺腫内癌が認められ,ACSが成立することが明らかになってきた.小さな腺腫に癌が発生して増殖した場合には,腺腫の遺残が認められる頻度が低くなるので,いわゆるde novo癌との鑑別が難しくなる.更にflat adenomaにもACSが成り立つと考えられる組織所見が認められることがあり,やはりいわゆるde novo癌との鑑別が問題になる.
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