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大腸検査にはX線検査と内視鏡検査があるが,老健法では大腸癌検診の精密検査として第1に内視鏡検査を挙げ,X線検査は内視鏡検査を補完するものと位置付けている.また,今後大腸癌の罹患率の増加により大腸癌検診が普及するとともに大腸検査が増加することが予想され,内視鏡検査だけで処理することができなくなり,X線検査をを積極的に導入する必要が生ずると考えられる.内視鏡検査優先の位置付けの当否はともかく,X線検査の精度を内視鏡検査に匹敵するようにしなくてはならないことは言うまでもない.しかし,現在大腸X線検査について,検査の現場で役に立つテキストがほとんどないのが実状である.このようなときに待望の書が出版された.
本書からは,鹿児島大学第2内科の消化管X線診断グループを主宰された故政信太郎先生のX線検査に対する情熱と伝統が浮かんでくる.本書は同門である西俣寛人・西俣嘉人先生による編集,伊原孝志・江平俊雄・土器屋貴技師による執筆である.X線検査において,医師とX線技師がすばらしい協調の上でより良い検査を行おうとする努力が本書からほとばしるのが感じられる.また,本書の中で指摘されているように,技師はX線所見をチェックし,診断は医師が行うのが原則である.しかし,X線所見を的確に捉えることは,技師ばかりでなく,若い医師にとっても重要であり,撮影技術を飛躍的に向上させることになる.現在,若い医師はX線装置・造影剤・フィルムなどについての知識が乏しいため,良いX線検査を行うにも,どこから手をつけて良いかわからないのが現状である.これらの点についてもわかりやすく述べられており,良いX線検査を行うためのエッセンスが凝集されている.
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