--------------------
書評「癌患者の症状のコントロール」
笹子 三津留
1
1国立がんセンター外科
pp.312
発行日 1991年3月25日
Published Date 1991/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102488
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
実際に苦労を重ねた者にしか書けない視点
医療が進んだ今日,他の疾患で死亡する人が減少するにつれて癌死亡は上昇し,現在4人に1人が癌で死ぬ状況にある.そして癌の治療医学の目覚ましい発達にもかかわらず,癌が死に直結する可能性を持つ病気であることに変わりはない.私は癌の告知とインフォームドコンセントを極力実践している.それにより,今まで意識してこなかった,もしくは避けてきた多くの問題が避けて通れなくなった.それと同時に,今までのような患者を騙し,患者の心から目を外らせたような医療では決してわからなかった難問の答えがいとも簡単にわかってきたことも事実である.本書を読んでみて,まず著者の方々の真剣な「思い」がひしひし伝わるのを感じた.そして,本書が実際に苦労を重ねた者にしか書けない視点を備えており,これから苦労をする人にとって極めて有用な内容であることに感心させられた.
癌の医療に正面から取り組めば取り組むほど,医療従事者は逃れられない多くの問題を抱え込む.癌を告知してインフォームドコンセントに基づいて医療を進めるとき,今までになかった多くの利点があるかわりに,新しい問題も生じてくる.癌の告知を受けた直後,治療が肉体的また精神的に辛い時期,治療が無効で積極的治療を断念しなければならないとき,末期で痛みの激しいときなどをどう乗り切るかが鍵になる.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.