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編集後記
平田 一郎
pp.302
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101595
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特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis;IMP)は本邦から世界に向けて発信された疾患概念であるが,まれな症例であるため,今までにまとまった報告はなく,本邦の消化器医の間においてもこの疾患に対する理解が普及しているとは言いがたい.本号ではこの疾患に対して,その病理学的特徴,臨床症候,画像診断学的特徴,治療・経過・予後,ならびに鑑別診断までを主題の中で包括的に取り上げた.主題症例では興味深い病態を示すIMP症例が呈示されている.
池田論文では17例という多数例での検討でIMPの病理学的特徴が述べられ,特に上皮直下の膠原線維沈着に関してcollagenous colitis(CC)との相違が膠原線維染色で検討されている.主題症例の西村綾子論文では,主病変以外の部に上皮直下にのみ帯状膠原線維沈着を認めた症例が提示され,IMPとCCの合併例か否か悩んでいるが,池田論文はそれに対する解決の糸口を与えるものであろう.照らし合わせてご覧いただきたい.
また,西村拓論文では14例という多数例でIMPの経過と予後を検討し,進行型と非進行型の2型があると推定しており興味深い.小川論文では動静脈奇形を有する腸管がIMP類似の注腸X線所見を呈することが提示されていて興味深い.
まれな疾患であるゆえ,病態が明らかでないIMPに関して包括的に取り上げたこのような企画は世界で初めてのものであり,読者のIMPに関する理解を深めるのに大いに役立つものと期待している.
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