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創意工夫を満載した経鼻内視鏡検査の実用書が出版された.臨床の第一線で活躍されている大原信行先生の『患者にやさしい経鼻内視鏡ハンドブック』である.わが国は消化器内視鏡の分野において世界をリードする多くの臨床医,研究者を輩出し続けており,この著者もその1人と言える.著者は新しい診療ツールである経鼻内視鏡の臨床的意義をいち早く認識するとともにその問題点をも正確に捉え,独創的な工夫を加え続けており,その詳細を余すところなく本書で示している.この姿勢こそが,困難な問題を創意工夫により解決し,わが国の消化器内視鏡技術を世界のトップに押し上げた多くの先達に通ずるものである.
略歴にある通り,著者はもともと外科医としてスタートしており,本書に示された多くの工夫には外科医としての経歴をうかがわせるものが少なくない.そもそもツールとしての上部消化管内視鏡の目的と意義は何であろうか? 疾患の存在を確認しその性状をできるだけ正確に捉えること,表層性の癌であればその広がりと壁深達度を診断すること,あるいは特記すべき異常のない状況を確認すること,そして,可能であれば疾患の治療(処置)にまで利用することである.しかし,第一線の臨床医にそのすべてが求められているわけではなく,求められるのは治癒が十分に期待できる早期癌の拾い上げや様々な疾患の存在・確認診断であり,高性能内視鏡や拡大観察でなければ見えないような微小癌までを発見することではない.では内視鏡により咽頭から十二指腸までの上部消化管疾患を同定し,患者の利益とするためには何が重要か? 言うまでもなく,検査に対する患者のコンプライアンスを高めることであり,機器の性能を十分に引き出すための内視鏡医の技術である.
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