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編集後記
平田 一郎
pp.1716
発行日 1999年12月25日
Published Date 1999/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102909
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本号のテーマは「大腸腫瘍の内視鏡診断は病理診断にどこまで近づくか」である.主題論文では,“色素撒布を含めた通常内視鏡診断”と“拡大内視鏡によるpit pattern診断”の両診断法が,大腸病変の非腫瘍・腫瘍の鑑別,上皮性腫瘍の異型度ならびに深達度診断などを行う上でいかに有用であるかについてそれぞれ論じられている.その結果,通常内視鏡診断で十分事足りる.あるいは,拡大内視鏡診断によって診断能が向上するといった両方の考え方が展開されている.概して言うと,現時点では,拡大内視鏡は所見の情報を増やすので上述の診断を行う際のオプションとして有用であるが,通常内視鏡診断を遙かに凌駕して病理診断に近づく画期的なものであると言い切るまでには至っていないようである.pit patternが細胞異型や組織の深部変化を必ずしも反映しないことやⅤ型pit pattern(特にⅤA型)の判定の不一致性などが,現在の拡大内視鏡pit pattern診断の限界点として浮き上がってくる.主題症例では,これら拡大内視鏡によるpit pattern診断の有用性と限界がよく示されている.
内視鏡観察技術の向上,内視鏡所見と病理組織所見の緻密な比較解析などにより,今以上に病理診断に近づいた内視鏡診断学の確立が遠からず期待できる本号の内容であったように思われる.
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