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編集後記
小山 恒男
pp.130
発行日 2009年1月25日
Published Date 2009/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101572
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「胃と腸」の1月号は夢のある主題であるべきだ.今年の巻頭を飾る「胃と腸」の主題は「未分化型胃粘膜内癌のESD─適応拡大の可能性」とした.しかし,難しい主題であった.ESDの適応は言うまでもなく,リンパ節転移の可能性が1%以下の癌である.Gotoda論文ではUL陰性の未分化型胃粘膜内癌のリンパ節転移率は0%であったが,症例数が少ないため95%信頼区間の最大値が2.6%であった.現時点での胃癌治療ガイドラインでは,転移の危険が低い癌と分類されているが,未分化型癌に対する適応拡大の是非に関しては異論も多い.
ESDの適応を未分化型癌へ拡大するためには,多くのハードルがあった.まずは病理組織学的な危険因子を明らかにすること.最新の染色法を用いた危険因子の検討が行われた.次は診断.X線で範囲診断はどの程度可能か.内視鏡では?拡大内視鏡では?AFIでは?さらには,未分化型癌に対してもESDは安全に施行可能か.偶発症は?一括完全切除率は?長期予後は?日本を代表する施設からの力作が揃った.
最終的には現在計画中の他施設共同前向き試験の結果を待たねばならないが,本号は未分化型胃粘膜内癌に対するESD適応拡大に関する現時点での到達点が示された.明日からの診療にぜひ,お役立ていただきたい.
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