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編集後記
田中 信治
pp.2004
発行日 2008年12月25日
Published Date 2008/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101555
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本特集号では「大腸癌の発生・発育進展」を主題に取り上げ,多角的にすべてを網羅して現時点での最新情報が理解できるよう企画した.「大腸癌の発生・発育進展」における平坦陥凹型腫瘍の位置づけは,非常に興味深い部分であるが,浸潤に伴う形態変化や粘膜内癌の消失が生じるため浸潤癌での臨床的解析には一定の限界があるし,両者の発育進展速度を加味する必要性など難しい点が多い.一方,臨床的に症例の蓄積や解析が急速に進んでいるのは,潰瘍性大腸炎関連腫瘍(dysplasia/癌)であり,serrated polyp-carcinoma pathwayもその定義や診断基準に関する研究が多角的に本邦でも進行中である.本特集号では,臨床所見や病理所見以外に,粘液形質や遺伝子異常についても解説いただいた.これらの手法は,形態学の限界を補助する研究手段として期待される.ただ,大腸癌の遺伝子異常が詳細に解明されつつあるなか,古くから議論されてきた通常の隆起型癌と平坦陥凹型癌の違いがK-ras mutationの異常以外に解明されてないもどかしさを感じる.
いずれにしても,本特集号が「大腸癌の発生・発育進展」に関する現時点での総まとめになり,これを起点に今後その病態解明がさらに進み,大腸癌の予防,早期診断や治療に応用される新たな知見が得られるとともに,大腸癌患者の死亡率低下,QOL向上に貢献できることを期待したい.
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