今月の主題 ウイルス肝炎1990
そこが知りたいウイルス肝炎最近の知見
STDとしてのウイルス肝炎
田中 慧
1
1都立駒込病院・肝臓内科
pp.1506-1508
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909570
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性行為および病気対応行為は人類保存の基本的行為であるが,その性様式また病気観には人種あるいは地域の,また時代の特色が反映していると考える.現時点で,ウイルス肝炎をわが国でSex-ually Transmitted Disease(STD)として位置づけることにいささか疑問を感じる.HBV carrierの少なくないわが国では,STDとの表現が一般社会に定着した場合,疾患概念の誤解を招き,HBV carrierを差別しかねない誤りを懸念するからである.
近年,ウイルス肝炎の解明は分子生物学の進歩につれて急速に進展してきた.わが国での肝炎ウイルスの感染経路を中心に述べることとする.感染経路,感染率も20歳代前後で大きく変化している.また,ウイルス感染では感染成立,持続感染成立,また発病は臨床的には異なる現象としても理解すべきである.カイロン社が発表したC型肝炎抗体(C-100)1)による臨床データも含めて述べることとする.しかし,それのみでC型肝炎の確定は保留としておくべきであろう.
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