今月の主題 ウイルス肝炎1990
〈Editorial〉ウイルス肝炎研究の進歩と診療の変遷
上野 文昭
1
1東海大学大磯病院・内科
pp.1452-1453
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909548
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“I know they call me old fashioned, against progress, but it's good. You think old things are bad... Why do people collect antiques?”(George E. Burch Jr.,MACP, 1910-1986)
医学は日進月歩である.ことに肝炎の研究は,ウイルス学の進歩などの結果,近年急速な発展を遂げた感がある.疾患の病態が解明され,新しい診断法や治療法が次々に登場するのは誠に結構なことではあるが,臨床医にとっては,ここに一つ困った問題が生じてしまった.それは,いかに努力して正しい知識を身につけていても,次から次へと新しい知見が登場してきては,せっかく得た知識がすぐに過去のものとなり,役立たなくなってしまうのではないかという不安である.肝炎研究に日夜没頭している専門家はともかくとして,広範な内科領域の診療を行わなければならない内科医にとって,肝炎に関する新しい知識を身につけるために許される時間は限られている.「進歩に追いつくために勉強する時間がない,勉強しないから自信がなくなる,自信がないからそのような患者はなるべく自分で診ずに専門家に任せよう,診ないからますますわからなくなる,わからないから勉強しなくなる」,というのが急速に進歩する医学分野における典型的な悪循環のパターンである.
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