今月の主題 消化器診療のcontroversy
Editorial:消化器診療のcontroversy
上野 文昭
1
1東海大学附属大磯病院・内科
pp.192-194
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909464
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●「臨床的有用性」とは何を意味するか?
A氏は40歳になったのを機会に成人病健診を受けてみたところ,血清コレステロール値が320mg/dlと上昇しているのを指摘された.主治医のすすめでB薬を服用したところ,数カ月後,コレステロールは正常値に戻った.この場合B薬は,はたして「臨床的に有用」と言えるだろうか?
この程度の治療効果を直ちに「臨床的有用性」に結びつける安易な考え方が,わが国ではあまりにも多く見受けられる.当然のことながら,コレステロールが下がり,心血管系の合併症を予防でき,なおかつその効果を相殺するような副作用が発現することなく,ひいては寿命が延びることが期待されなければならない.また治療を続けることの手間暇や,苦痛や,費用も納得できる範囲でなければならない.すなわち医師のみが納得できることではなく,患者自身に利益がもたらされることをもって「臨床的有用性」としなければならない.欧米ではこの辺の考え方が明確である.たとえば最近の非A非B型慢性肝炎に対するインターフェロン療法の論文1)でも,インターフェロン投与がaminotransferase値に及ぼす影響を検討することが目的であると明記してあり,決して検査データ上の改善を「臨床的有用性」に短絡していない.
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