今月の主題 消化器診療のcontroversy
胃・十二指腸疾患
胃・十二指腸潰瘍の多剤併用療法は単独療法に優るか?
岡崎 幸紀
1
1山口県厚生連周東総合病院
pp.212-213
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909470
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●多剤併用療法のはじまり
消化性潰瘍の治療としての多剤併用の根拠は,SunとShayにより提唱された潰瘍の成因論として有名な“天秤説”にあると思われる1).潰瘍の発生が攻撃因子の増強,防御因子の低下とするこの説に順じて考えれば,治療は攻撃因子の抑制,防御因子の増強がもっとも効果的となる.
“天秤説”の発表された1960年代の半ば頃から,わが国では各種の抗潰瘍薬が次々と開発され,また,わが国の医療保険制度から薬剤の投与にほとんど制限のなかったことから,潰瘍患者に多数の薬剤が投与される結果となった.一剤よりも多剤の方が効果があるように思われがちであるが,抗潰瘍剤の多剤併用が,単独投与より効果的であったという明確な資料は残っていない.立証するような厳密な臨床試験が行われていない.そしてヒスタミン受容体拮抗薬(以下,H2ブロッカー)の登場により多剤併用療法はその評価を失ってしまった.
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