治療のポイント
胃・十二指腸潰瘍の食事療法
三辺 謙
1
1慶大内科
pp.1502-1503
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201019
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潰瘍の食事療法の理念
胃・十二指腸潰瘍の治療は精神的および肉体的の安静と,食事療法とがもつとも重要で,種々の潰瘍治療薬剤が用いられている現在でも,この二つの重要性は失われていない。
胃・十二指腸潰瘍の食事療法は,一方では物質欠損である潰瘍を庇護するという面と,もう一方では十分な栄養とカロリーを補給して潰瘍の治癒を促進しようという積極面とを兼ねたものである。この両面は,一見矛盾するようであるが,多少の考慮を加えさえすれば,うまく両立するのである。たとえば,食間および夜間の胃液分泌が少なくないことを考えれば,胃を空虚にすることは得策ではなく,胃液の塩酸を緩衝するような食事を頻回に与えて,胃を空虚にしないことの方がむしろ重要なわけであり,また,胃液分泌を刺激することが少ない流動性炭水化物は塩酸緩衝作用をもたないが,蛋白質は胃液分泌を促進するかわり,酸と結合する能力が大きいという利点があるという具合である。だから,潰瘍の食事療法にあたつては,むかしのような厳格な制限方式はすてて,積極的な庇護食事という観点から考える必要がある。
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