連載 日本の災害と公衆衛生——過去・現在・未来・12
情報活用
宮川 祥子
1,2
1慶應義塾大学看護医療学部
2慶應義塾大学健康マネジメント研究科
pp.1042-1048
発行日 2023年10月15日
Published Date 2023/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210157
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健康危機での意思決定と情報
情報とは、意思決定における不確実性を減らすものである。例えば、私たちが今日傘を持っていくべきかどうか迷うとき、Webサイトやテレビなどで天気予報をチェックする。そして降水確率が低いようであれば傘を持たずに家を出る。ここでは、「傘を持っていくか持っていかないか」という意思決定をしようとしており、そこには「今日雨が降るかどうか分からない」という不確実性が存在している。その不確実性を減らすために、私たちは天気予報という「情報」を手に入れて、不確実性を減らそうと試みる。現実の世界では不確実性は決してゼロにはならないが、しかし「降水確率10%」という情報を得ることによって、「今日は傘を持たずに出掛ける」という意思決定ができるのである。
大規模災害への対応では、今日の天気とは比べものにならないほどの多様で複雑な意思決定を求められる。自治体は、避難所を開設しなければならないが、その際には自宅を離れて避難する必要のある住民がどの程度いるかという情報を手に入れなければならない。消防・救急は、傷病者の救助に向かうためのルート、必要な機材、救出後の搬送先を決めるために、傷病者・要救助者の位置、通れるルート、現地の状況、受け入れ可能な医療機関についての情報を手に入れなければならない。そして、医療機関は傷病者を受け入れるかどうかを決定するために、インフラや設備の被害状況、スタッフの稼働状況、ベッドの空き状況などを知らなければならない。
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