けんさ—私の経験
HCV抗体陽性反応を伴い診断に苦慮した急性A型肝炎の1例
藤原 隆一
1
1田中病院内科
pp.509
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906446
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症例は38歳の女性.上腹部痛,食欲不振,悪心,全身倦怠,微熱を主訴に来院された.診察所見で,眼球結膜に軽度の黄疸を認め,右季肋部に肝を触知した.約2週間前に生ガキを摂取したとのことであり,当初急性A型肝炎を疑い,入院治療のうえで検査を進めた.入院時の検査結果は,総ビリルビン値 2.9mg/dl,GOT値 2,091IU/l,GPT値 2,344IU/l,LDH値 530IU/l,γ-GTP値 130IU/l,HBs抗原陰性,HBs抗体陰性,IgM型HA抗体陽性,HCV抗体陽性であり,A型急性肝炎とC型急性肝炎の併発が疑われた.過去の職場での健康診断では肝機能障害を指摘されたことはないとのことであった.
入院後,安静保持と肝庇護剤の投与にて自覚症状は軽快し,総ビリルビン値,GOT値,GPT値,LDH値,γ-GTP値は順調に低下していった.自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変の可能性も考えて,抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体,LEテストを行ったがすべて陰性であった.入院3週間後に再度HA抗体とHCV抗体を再検し,さらにHCV-RNA定性を行ったところ,IgM型HA抗体陽性,HCV抗体偽陽性,HCV-RNA定性陰性であった.
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