増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液生化学検査
蛋白
α1—アンチトリプシン,α1—アンチキモトリプシン
〆谷 直人
1
,
大谷 英樹
1
1北里大学医学部臨床病理学
pp.198-199
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906304
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
α1-アンチトリプシン(α1AT)およびα1-アンチキモトリプシン(α1ACT)は,蛋白分解酵素を阻害する蛋白(protease inhibitor)に属し,前者はエラスターゼ,トリプシン,キモトリプシン,コラゲナーゼなど各種のproteaseの作用を中和ないし阻害するが,後者はキモトリプシンやカテプシンGを中和し,またPSA(prostate-specific antigen)と結合する特徴がある.また,両者は炎症や癌などで組織障害時に血中に増加する急性期蛋白の一種でもある.
α1ATは主に肝細胞で生成され,炎症時には2~3日で基準値の約2倍に達し,炎症の指標となる.また,悪性腫瘍でも増加することが多く,腫瘍マーカーの一つでもある.α1ATには遺伝型として,20数種の表現型phenotypeがあり,それぞれ血中濃度が異なる.特にα1ATの最も低値を示す先天性α1AT欠乏症(表現型ZZ型)は慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)を発症しやすく,また小児肝硬変を伴う頻度も高い.
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