増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液検査
凝固/線溶系検査
血栓止血のメカニズム
東田 修二
1
1東京医科歯科大学臨床検査医学
pp.143-145
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906280
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正常の止血機構
外傷により出血が起こると,生理的な反応として血管損傷部位に効果的な血栓(止血栓)が形成され止血する.一方,疎通している血管が閉塞して臓器障害を起こす病的な血栓もあるが,両者の形成機序はほぼ共通している.
血液は,正常な内皮細胞でおおわれた血管内では血栓を作ることはない.しかし,外傷により血管内皮細胞が断裂し,血液が内皮下組織のコラーゲンなどに触れると,von Willebrand因子(vWF)を介して血小板が内皮下組織に粘着し,さらに活性化され凝集して一次止血栓を形成する(図1).また,内皮下組織にある組織因子(tissue factor:TF,因子番号では第III因子,組織トロンボプラスチンの蛋白成分に相当)は,血液中の活性化第VII因子と複合体を形成して第IX因子を活性化する.活性化第IX因子は第VIII因子と共同して第X因子を活性化する.活性化第X因子は第V因子と共同してプロトロンビン(第II因子)をトロンビンに換え,トロンビンはフィブリノゲン(第I因子)を分解してフィブリンを生成する.フィブリンは第XIII因子によって安定化し凝固機序が完了する.安定化フィブリンは血小板による一次止血栓を網状に包み込み,強固な二次止血栓にして止血を完全なものにする.成書にしばしば示される模式的な凝固カスケード(階段状に連続した滝の意)を,図2の太い矢印で示した.
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