今月の主題 血栓症の予防と治療
血栓症を理解する
出血すれば止血する―止血のメカニズムを理解する
松尾 理
1
1近畿大学医学部第2生理学
pp.918-920
発行日 2004年6月10日
Published Date 2004/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100823
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
ポイント
血液の相反する作用:血液は循環系の中にあるときは,流動性を保持(ゾル状態)して,スムースに流れる.これは細胞の物質代謝にとって非常に効果的である.血液が自然止血機構によって循環系の中で固まり(ゲル状態)血流を障害/遮断するような事態は,血栓症として生体に悪影響を与える.しかし,血管が損傷を受けた場合,速やかに出血部位を塞ぐ必要がある.こうしてできる止血血栓は生体にとって有益である.このように「ゾルゲル変換」が起こる場合によって,生体にもたらされる影響は極端に異なる.
血栓:血栓は発生する血管によって白色血栓と赤色血栓に大別される.白色血栓は血流の速い動脈でみられ,血小板主体である.これに対して,赤色血栓は血流の遅い静脈でみられ,血液全体が固められているので,赤く見える.赤色血栓は血栓溶解療法によく反応する.
出血:血管の損傷による出血の場合,血管の直径と内圧によって出血量が決まる.大きな血管の場合,直接結紮する必要がある.これに対して,微小血管からの出血の場合,自然止血機構の作用で止血する.しかし,病態によってはウージングと呼ばれるような出血があり,止血に困難な場合がある.特にDICの場合には,消化管出血や皮下出血など直接止血しにくい場合がある.DICでは止血のために抗凝固物質のヘパリンを使用する.
止血機構:自然止血機構はその機能低下で出血傾向を引き起こし,機能亢進で血栓形成を起こす.このバランスが平衡状態に保たれ,正常な生命維持活動が営まれる.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.