医道そぞろ歩き—医学史の視点から・50
神と聖霊の世界に引き返したパラケルスス
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.1066-1067
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906087
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医学史をひもとくと,科学としての医学からさらに進んで宗教へと踏み出し,思索の深みにはまりこんだ医者に出会う.ヴァン・ヘルモントもそうであったし,パラケルススもそうである.いずれも時代を超越した鋭い思考と感性の持ち主で,精気と霊魂と自然力が混然として医学思想を支配していた時代から,理性的な科学の時代へと最後の跳躍を試み,そしてふたたび神と精霊の世界へ引き返した.
パラケルススは北イタリアのフェラーラ大学で医学を学び,欧州を遍歴した.有名な出版業者フローベンの痛風と思われる下肢の病気を治して彼に信頼され,33歳のときにバーゼル大学の教授になったが,1527年6月5日に「ヒポクラテスやガレノスたちの教義から離れて自らの経験と研究により教える」と宣言したため,教授たちに排斥されて1年後にバーゼルを去った.
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