Report
98年10月ドミニカ共和国ハリケーン災害国際緊急援助隊派遣に参加して
箕輪 良行
1
1船橋市立医療センター救急救命センター
pp.1047-1050
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906084
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はじめに ―ハリケーン災害は歴史以来の大惨事
「ドミニカはマリア様が岬の先にいらしてハリケーンを左右に振って下さってきたのに,今回はサボられた」.この言葉に大らかな国民性が現れています.ハリケーン「ジョージ」は最東端のマリア岬から,島国で九州ほどの面積のドミニカを,最大瞬間風速70m/秒,時速15kmで15時間かけてじっくりと横断直撃しました.その暴風雨による被害は死亡者249人,避難者12万人,電気や通信,道路のインフラストラクチャー,食料や家屋の日常生活被害,農作物被害で当該国の国家予算の1.42倍に及ぶ,国の歴史始まって以来空前の大惨事でした.衛生状態が悪化して感染症の発生が予測されました.同じ規模の台風がわが国のような文明国を直撃したら,想像を絶するでしょう.当該国はまだ開発途上で家屋,公共施設,電気や通信,上下水やガスが十分に確保されていません.国民もこのような文化的生活環境やものがないことにあまりびっくりしない人々に見えました.こんなときでも毎日正午から午後2時までは,商店も銀行も,仕事はお休みになります.わが国なら,きっと非常事態ということで休み返上となって復旧に励むところではないでしょうか.そういうお国柄にみえました.怠け者というのではなく,おそらくそういう形で,結果を受け入れているのでしょう.実際,その時間帯に屋外は32〜33℃で私たちはとても働けませんでした.
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