“ホッ”とspot
思い込みは禁物
朝倉 健一
1
1由利組合総合病院内科
pp.455
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904158
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1例目は,救急搬送された60歳台の男性で,意識もなく救急外来に到着した.JCS 300のレベルである.瞳孔は両側ともpin pointで,四肢は弛緩性麻痺を呈し,Babinski反射も陽性であった.早速,頭部CTスキャンをとったが,high density area,lowdensity areaいずれもみられず,脳外科とも相談したが,診断は脳幹部梗塞の疑いということになった.しかし,血圧は正常で,既往歴にも特記事項なし.脳梗塞患者であれば,必ず何らかのリスクファクターを有しているが,この症例は心拡大もなく,心房細動もなく,高脂血症,糖尿病もなかった.こういう症例もあるのかと思って,家族に重篤である旨を伝えた後,内科病棟へ入院させた.ところが,翌日午後から,深い眠りからまさしく目醒めたのである.よくよく病歴をとりなおすと,睡眠薬の空き瓶がまわりにあり,家族はこれを隠していたことがわかった.患者は気分がすぐれず,睡眠薬を多量に服用していたために意識障害に陥ったのである.
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