ワンポイントアドバイス
尿酸塩結晶の標本作製に水は禁物
手嶋 優子
1
,
佐藤 恵美
1
1近畿大学医学部附属病院 病院病理部
pp.422-423
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103532
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痛風結節は,尿酸塩結晶が結合組織内に沈着し結節となったものである.病理標本として尿酸塩結晶を観察する場合,本結晶が水に溶けやすいため純アルコール固定が推奨されている1).今回提出された痛風結節を,文献に沿って純アルコール固定を一晩行った後,通常の過程で処理したうえで薄切標本を作製し,自動染色装置でHE(hematoxylin-eosin)染色を実施して鏡検したが,好酸性無構造物質を囲む異物肉芽腫が観察されるのみで,尿酸塩の針状結晶は認められず偏光下でも同様であった.純アルコール固定であるにもかかわらず結晶が認められなかったため,その原因を追求した.HE染色過程ではヘマトキシリンやエオシンなどの水溶液を使用し,さらにその間に水洗を行うので,これらの過程で尿酸塩結晶は水中に溶出してしまうのではないかと考えられた.文献では,HE染色過程でも結晶が溶出してしまうと記載されていた1,2).
そこで,ヘマトキシリン1分,分別1秒,色出し1秒,エオシン10秒からなる術中迅速診断用のHE染色を行ったところ無数の針状結晶が顕微鏡で観察され,さらに偏光下に重屈折性を示し暗い背景に針状結晶が光って見えた(図1).一方,痛風結節の未染色組織標本を偏光顕微鏡で観察した記述が載っている文献1,3)があり,筆者らも切片を脱パラフィン後キシレン漕から引き上げた直後に封入して鏡検すると針状結晶が認められた.
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