喫茶ロビー
「思い込み」診療していませんか
浜田 良機
1,2
1山梨大学名誉教授
2東京医療学院大学学長
pp.968-968
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_968
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- 文献概要
「思い込み」には,「既成観念」,「先入観」,「偏った見方」,「偏見」など数多くの類義語が挙げられているが,患者さんを診察,診断,治療する医師の立場からは,絶対に避けなければならない.患者さんを間違えて手術をしたために訴訟になったような事件は,確認を怠った「思い込み」による重大な過ちの結果であるが,診断や治療法の選択には直接関係のない「思い込み」により,自分は気づかないまま多くの患者さんに不快感を与えている可能性がある.特に大学で先生といわれて尊敬を受けている(?)医師には,それに気づかない可能性が高いと思われる.開業している私の同級生のほぼ全員が,「教授が外来をしている日には患者さんが来ない」と嘆いていたが,その原因は患者さんの気持ちへの配慮を欠いた,偉そうな「上から目線」診療に加え,患者さんは教授に診てもらっていることにはまったく気づいていないのに,無意識での教授であるとの「思い込み」の影響も少なくないと思われる.その結果,患者さんは不愉快(?)となって,受診を希望しない状態,すなわち暇な外来となっていると考えられる.現役の教授時代に非常勤医として勤務していた地域の中核病院で,診断・治療方針には関係ないが,自分は教授であるとの無意識での「思い込み」診療を行った結果,患者さんに大いなる不快感を与えた反省例を経験しているので,将来の教授を目指す先生方に,注意喚起の意味で私の反省例を紹介したい.
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