内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・7
思いこみは禁物
長野 展久
1,2
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
2東京海上メディカルサービス
pp.1808-1812
発行日 2002年10月10日
Published Date 2002/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908924
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先入観
医師になって数年が経過すると,ひととおりの医学知識が身につき,臨床的なセンス,あるいは勘といったものにもだんだんと磨きがかかり,無駄の少ないプロセスで的確な診断ができるようになると思います.その一方で,症例によっては時間の経過とともに本来の病態がはっきりとし,診療途中で方向修正を余儀なくされたり,初期段階の先入観にとらわれて思わぬ落とし穴にはまってしまうことも時に経験します.そのような場合には,医学書や関連文献を参照したり,他の医師に意見を求めるなどといった配慮が望まれますが,ほんのちょっとしたことに気づかず治療が後手にまわり,患者の容態が悪化して残念な結果になることもあります.
今回紹介する症例は,あとから振り返るとそれほど診断が難しくないにもかかわらず,初期段階の先入観から抜け出すことができずに,最終的には患者が死亡した裁判例です.
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