増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
思い込みの恐さ
大島 伸一
1
1名古屋大学医学部泌尿器科
pp.72
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902558
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1980年の泌尿器科紀要の26巻に「体外腎手術による腎内動静脈瘻の治療」というタイトルで報告してあるから,1970年代の終わり頃のことである。
腎臓の生検後に血尿を主訴として受診された16歳の男性の患者さんのことである。腎生検後に血尿が出現し,1か月様子をみたが止まる様子はない。初診時かなりの血尿で放置しておくと貧血が進行するのではないかと思われた。理学的所見では,左腎臓部位に一致して背中側から血管雑音が聴取できる。腎臓の生検後に発症しているから,腎内血管の何らかの損傷だろうと予測した。腎動脈造影を行ったところ,左の腎臓の区域動脈上前肢から弓状動脈に移行するあたりに3個の動脈瘤を伴った動静脈瘻を発見した。超選択的腎動脈造影の技術はまだなく,選択的腎動脈造影で動静脈瘻は明らかに撮し出された。
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