増刊号 Common Disease 200の治療戦略
消化器疾患
劇症肝炎
与芝 真
1
1昭和大学藤が丘病院消化器内科
pp.175-177
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904032
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疾患概念と病態
肝は巨大な予備力と強力な再生力に恵まれた臓器である.肝はウイルス感染,アルコール,薬剤,虚血,変性など様々な侵襲を受けるが,大半の症例ではこの天賦の予備力と再生力により,黄疸や倦怠感など一定の症状は呈するものの破綻なく治癒する.しかし,肝細胞の破壊や変性がこの肝の持つ能力を越える範囲と速度で進行すると,肝再生力が追いつかなくなり,肝機能の不全状態に陥る.一般には発症後8週以内にこの状態に至ったものを急性肝不全,欧米ではfulminant hepaticfailure(FHF)と呼んでいる.わが国では劇症肝炎という病名が多用されているが,この用語を使用する場合,本来は基礎病変は肝炎に限られるべきだろう.
欧米ではFHFはあくまでも急性肝障害の範疇でとらえているが,わが国の劇症肝炎の診断基準では,意図的にこの点を除いて単に肝炎としている.これは,東南アジアに多いHBVキャリア劇症化もこの診断基準に包摂する意図があったためであるが,それではC型を含め慢性肝炎の劇症化もこの診断に包摂するのかとなると,専門家の間でもはっきりしない.最近acute on chronicという名称が流布しており,この呼称は慢性肝炎の劇症化を包摂するが,先述の点の明確化がないうちに新しい病名を導入するのは好ましくないと思われる.
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