今月の主題 肝炎への新しいアプローチ
急性肝炎へのアプローチ
劇症肝炎—治療
与芝 真
1
1昭和大学藤が丘病院・内科
pp.824-827
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221670
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厚生省難治性肝炎斑会議の劇症肝炎分科会では,昭和49年から全国の主要医療施設を対象にアンケート調査を行い,わが国の劇症肝炎について年次別の集計をしている.それによると昭和49年以来,昭和59年までは16%台から30%弱へと着実に上昇していた生存率が,60年には再び16%へと落ち込んでしまった.その理由はいろいろに分析されようが,要は,このことは,この間に普及した血漿交換(PE)とインスリンーグルカゴン(G-I)療法が決して決定的治療にはなり得ないことを示唆しており,わが国の劇症肝炎解決の道遠しを実感させる.
一方,欧米では肝移植の普及と共に,劇症肝炎も対象疾患とされ,特に予後不良の非A非B型劇症肝炎については積極的に肝移植を行い,良好の生存率が得られているという.わが国でも臓器移植再開への風潮と共に,現在の肝補助型治療に見切りをつけ,「劇症肝炎肝移植待望論」が大手を振って歩くようになるかもしれない.結局,わが国の従来からの肝補助型の治療は,理論的に,また,実現可能になったら実際的にも,肝移植に道を譲らなければならないのだろうか.筆者はそうは思わない.しかし,欧米の肝移植に対抗して,劇症肝炎の予後を本質的に向上させるには,現在のわが国の治療方法を飛躍的に変革していく必要がある.
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