書評
—日野原重明監訳—学生のためのプライマリケア病院実習
吉岡 守正
1
1東京女子医科大学
pp.132
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904015
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大学病院での卒前卒後を通じて縦割の風習が根強く残っている.本書にはそのような現状に少しでも横並びの初期研修の模を打ち込みたいという若い医師たちの強い意欲が感じとられる.
知識はもちろん必要であるが,臨床では経験を欠くことはできないという彼らの体験を生かして,医師を目指す学生の夢を実現するためには,既存のレールに乗っかることで妥協する以外に,いろいろな手だてがあるということを,学生の立場に立って手際よく纒めているのが特徴と思われる.なかでも第3章の「学生のための臨床的見識(臨床の力)」は,病人に接する態度として最小限要求される事柄を説得力をもって記述している.これらの態度は対病人だけでなく,不特定多数の人々を相手にする職業人ならぜひ身につけてほしい資質である.医学生であっても,低学年のうちから実践の場で学ぶ機会が増えてきており,その際には非礼は許されるべきでない.どのように振る舞えばよいかは知識として記憶しているだけでは実際にはうまく使えず,何度も使用してみる機会を持って(体験して)初めて生かすことができるものである.その意味で,医学部の教育カリキュラムに体験の時間を有機的に配置することが好ましい.
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