シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編
拡張型心筋症
上野 光
1,2
Hikaru UENO
1,2
1九州大学医学部循環器内科
2冠動脈疾患治療部
キーワード:
特発性拡張型心筋症
,
連鎖解析
,
SSCP法
,
candidate gene approach
Keyword:
特発性拡張型心筋症
,
連鎖解析
,
SSCP法
,
candidate gene approach
pp.466-471
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904056
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はじめに
拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy;DCM)とは心筋収縮力の低下と心室の拡大を主徴とし,やがては薬剤耐性の心不全に陥いる極めて予後不良の疾患群であり,現在のところ心臓移植術しか根治の手段はない.拡張型心筋症と診断された症例の約半数が原因不明のいわゆる特発性DCMであるとされる.罹患率は人口10万人当たり5~8人とされているので1),わが国でも毎年6千~1万人の発症が予想される.ほかの心疾患に有効な治療手段が確立しつつある現在,循環器領域では今後ますます重要度の高まる疾患であるとも言える.
拡張型心筋症は,病因ではなく病態に基づく疾患概念であるためさまざまな疾患単位を含んでおり,事実近年の分子遺伝学的・分子生物学的解析では複数の病因候補遺伝子が同定されているが(すなわち遺伝子異常は単一ではない),その数は今後ますます増加することが予想され,同じ病名であっても病因論的には異質性が極めて高い.また心筋症には初め心筋の肥大を示しながら,その末期には心室の拡張をきたしDCMと診断されるものも存在する.さらに明らかな遺伝性を示さない2次性の心筋症も多く存在する.以上,病態からひと括りにされた拡張型心筋症の中から遺伝子異常に基づく心筋症を選別し(特発性DCMの約20%に遺伝性を認める2),さらに病因となるべき遺伝子異常を診断することは意外と難しいことが予想される.
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