図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・1【新連載】
分子医学から臨床神経学へ
辻 省次
1
1新潟大学脳研究所神経内科
pp.1638-1641
発行日 1995年8月10日
Published Date 1995/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903818
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ヒトの脳あるいは末梢神経を侵す神経疾患には数多くのものが存在する.従来から病理学的,あるいは生化学的な面から精力的な研究がなされてきていたが,神経疾患の発症機構を分子レベルで解明することは極めて困難であった.ところが,この10年の問に,分子遺伝学的な手法が神経疾患の研究にも応用されるようになり,神経疾患の発症機構を分子レベルで解明することが初めて可能になってきた.この輝かしい進歩の原動力になった研究手法は,ポジショナルクローニング(positional cloning)と呼ばれるものである.これは,発症の原因となっている生化学的異常などについての手がかりが全くなくても,遺伝性疾患については,その原因遺伝子を分子遺伝学的な手法によって発見することができるというものであった.このアプローチにより,Duchenne型筋ジストロフィー症,Huntington病をはじめとして,数多くの神経疾患の原因遺伝子が発見された.
分子遺伝学の飛躍的な発展により,臨床神経学そのものが今新たな地平を迎えつつあると思う.実際にどのようなインパクトがあるかという点については,次のようにまとめることができる1).
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