図解 病態のしくみ—遺伝子・サイトカインからみた血液疾患・1【新連載】
急性前骨髄球性白血病
木崎 昌弘
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.183-189
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402902568
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●はじめに
急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は,FAB(French-American-British)分類ではM3に相当し,急性骨髄性白血病の約15%を占めている.歴史的には1950年代に,多数の異常な前骨髄球と出血傾向を有する白血病として記載された.
APLは,臨床的にはDIC(disseminated intravascular coagulation)を高頻度に合併し,特異な染色体異常15;17転座[t(15;17)]を有することが特徴である.近年の分子生物学の進歩により,15;17転座に起因する遺伝子異常,すなわち転座の切断点は17番染色体上ではレチノイン酸レセプター(RARα)遺伝子にあることが明らかとなり,また15番染色体からPML(promyelocytes)遺伝子がクローニングされるなど,分子レベルでの病態の解明が進んでいる.さらには,オールトランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)の経口投与による分化誘導療法により高率に完全寛解が認められ,臨床的にも,また分子レベルでの病態解明の上からも,APLは最も注目されている血液疾患である.
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