増刊号 内科エマージェンシーと救急手技
疾患からみた内科エマージェンシー
消化器疾患
81.劇症肝炎
清水 勝
1
1岐阜県立岐阜病院・救命救急センター
pp.1949-1951
発行日 1990年9月30日
Published Date 1990/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900498
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●診断と重症度の把握
劇症肝炎は急性肝炎の経過中,広汎な肝細胞壊死に基づく意識障害をはじめとする肝不全症状をきたす予後不良の肝炎である.高橋らの全国集計によれば,生存率は16〜28%である.劇症肝炎の治療にあたっては,正確な診断と重症度(昏睡度)の把握が重要である.診断基準を表1に示したが,①発症より8週間以内に肝性昏睡II度以上,②プロトロンビン時間40%以下が要点である.発症から10日以内に肝性脳症を発現する急性型と,それ以後に発現する亜急性型に分けるが,前者は予後がよい.肝性脳症は通常5段階に分類されており(表2),診断基準の1つであるII度では,羽ばたき振戦の出現,指南力・計算力の低下,異常行動,傾眠状態などがみられる.
原因は本邦では大部分がウイルス性である.A型,B型,非A非B型肝炎ウイルスに起因するが,最近ではHCV抗体陽性のC型劇症肝炎の存在することも明らかになっている.起因ウイルスの種類により予後も異なる.A型劇症肝炎は比較的稀であるが,生存率は高い.B型は急性型で発症することが多く,一方,非A非B型は亜急性型の経過をとり,死亡率が最も高い.
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