書評
—光藤和明 著—術者MITSUDOの押さないPCI
齋藤 滋
1
1湘南鎌倉総合病院循環器科
pp.413
発行日 2018年3月10日
Published Date 2018/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225373
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その時(1983年)の情景はいまだに鮮明に僕の記憶の中に残っている.当時僕は関西のある病院でバックアップもないまま,ひとりでPCIを行っていた.大阪で開催されたクローズドの冠動脈造影のための症例発表研究会において,その当時はあり得なかった右冠動脈の慢性完全閉塞に対するPCIの症例シネを呈示した.それに対する反応は驚くべきものであり,その会を仕切っておられた「エライ」先生お二人が,僕のことを「どこの馬の骨が」と言われて口撃されたのである.そして,僕に引き続いて光藤和明先生も,PCIの症例を呈示された.残念ながら内容までは覚えていないが,素晴らしいPCIであった.しかしながら,驚くべきことに彼のPCIに対しても,またもや「エライ」先生お二人は口撃された.当時若造であった僕たちは,これらの口撃に対して反論することもできなかった.僕は光藤先生が廊下に出てこられるのを待ち受け,「あんなこと言ってひどいよねえ」と訴えた.
これが本書の著者であられる光藤先生との初めての出会いであり,生涯の友との出会いだったが,思えばこの時の情景の中に,既に光藤先生の片鱗が光り輝く青魚の鱗のように表されてる.僕にとっての彼は,「反骨」「理想の追求」「物事は理論で説明つく」という信念を持った人である.
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