REVIEW & PREVIEW
薬物性消化管傷害
溝上 裕士
1
,
岩本 淳一
2
1筑波大学附属病院光学医療診療部
2東京医科大学茨城医療センター消化器内科
pp.1201-1204
発行日 2015年6月10日
Published Date 2015/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223577
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何がわかっているか
1980年初頭にHelicobacter pylori(ピロリ菌)が発見されて以来,消化性潰瘍の2大原因として,ピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が認知されてきた.近年,人口の高齢化が進み,虚血性心疾患などの循環器系疾患や変形性関節症などの整形外科疾患が増加している.NSAIDsの元祖であるアスピリンは,低用量アスピリン(LDA)が循環器系疾患・脳血管障害において抗血小板薬として汎用され,NSAIDsも腰痛・関節炎などの整形外科的疾患,炎症性疾患などの侵害受容性疼痛のコントロールを中心に広く用いられている.しかし,LDAやNSAIDsの投与がしばしば胃・十二指腸潰瘍や消化管出血などを引き起こすことが問題となっている.われわれの施設における潰瘍症例について,2002〜2011年を3期に分けて成因を検討したところ,初期→中期→後期にかけてLDAの比率が増加していたが,NSAIDsは変化がなかった(図1).
NSAIDs起因性上部消化管傷害は,関節リウマチ(RA)でNSAIDsの長期投与において発生する例が代表的であった.1991年に日本リウマチ財団が行った疫学調査では,NSAIDsが3カ月以上投与されていたRAを中心とした関節炎患者1,008例に無作為に内視鏡検査を施行したところ,15.5%に潰瘍の発症を認めたと報告された1).本邦ではその15年後,2006年に矢島ら2)が報告した261例に対する同様の検討でも10.3%,さらに2009年のMiyakeら3)の報告では21.9%と,従来と同様の潰瘍発症が確認された.
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