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生物・人間の生存と自然法則 生物の生存existenceには時間・空間・物質・自然法則の4条件を具備していなければならないということは,あえてヒューム,スペンサー,ヘッケルら偉大な哲学者を地下より喚起するまでもなくしごく妥当な定義であると考えてよかろう.ただし価値観念を"生存"ということばに含ませるとすれば,人間の生存という問題は,その時代の科学・医学の進歩にしたがって定義づけるのが妥当であるように思われる.最近,世界各国で行なわれるようになった臓器移植,とくに心臓移植手術に関して,新聞・テレビの報道機関はこぞってその成功を,新時代の当来を告げるかのように称賛をおしまない.しかしながら,人間の生存の本質的な意味,倫理観,哲学的思考はあまり十分に議論されているようには見受けられない.確かに歴史をふりかえってみると,宗教的倫理観が正しい自然科学の発展をはばんできた事実は数多く存在する.医学の進歩にしてもあまり多くの議論は正しい前進を渋滞させることになりかねない.しかしながら,いずれにしても"生存"という定義はさきに述べた自然法則natural lawに従ってなされるべきものと考えられる.ただこの自然法則が,今日どこまで明らかにされているかを考えてみると,その未知の分野があまりにも広すぎるので,現在の段階で性急に結論を出すことに躊躇を感ずるのは,自然科学の一分野である生理学の研究にたずさわっている私ばかりでく,生命現象を研究する者にとってもそうであろう.ともあれこの問題はあまりにも複雑すぎてこの小文に記述することはできないので,やはりここではただ自然法則の複雑さをかいま見た話をすることにしておこう.
太刀魚釣りの最中に浮かんだ2つの疑問
先般,教室のリクリエーションで熊本と鹿児島の県境にある湯の児温泉という海浜の保養地へ行った.海は水俣病で有名になった水俣湾にとなり合わせているが,ここは昔から保養地とあって美しい風景を楽しむことができる.夕方,まえから計画していたように,太刀魚釣りに出かけることになった.舟は4,5人乗りの動力のついた屋形舟である
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